名古屋駅西は空襲から免れた築100年近い長屋が数多く現存している。この地区の住人は高齢者が多く空き家も目立つ、しかしここに少しでも長屋の魅力を理解して喜んで借りてもらいたいというオーナーがクライアントである。
計画は大通りから少し入った築60年になる3軒長屋の1軒である。長屋の骨組みはしっかりとしていたが、奥の庭の水廻りは増築が重ねられ陰湿な環境になっていた。これを長屋本来の光庭を再生して、土間通路の横につながる部屋の配置を再構築した。限られた空間をより広く感じるものとするため、水廻り空間は鑑賞できる景色としてシンプルでクリーンなデザインとした。また、長屋本体になる年を積み重ねて傷ついた味のある柱・梁は表出させ、骨組みの理解できる力強いものにした。
懐古的な保存ではなく、古き良き物を表した上に新しいものを加えぶつけることを試みている。現代の材料をつかったデザインと、長く熟成された長屋の魅力を融合させてミステリアスな世界を創りだそうと考えた。新築のみではなし得ない魅惑のエネルギーをもって生まれ変わったミクロコスモスである。
plan
data
住所 | 名古屋市中村区 |
竣工年 | 2001年 |
構造 | 木造 |
延床面積 | 68.0㎡ |
photo